株式会社 脳力開発研究所|アルファ脳波を指標にしたメンタルトレーニング、脳力開発、ヒーリングなどの研究開発、指導を行っています。

サトルエネルギーと脳波との関係 (2)
サトレエネルギー学会シンポジウム発表論文より抜粋
徳島大学工学部講師
脳力開発研究所志賀一雅
要 旨
サトルエネルギー現象と思われる波動測定に関し、オペレーターの右脳と左脳の脳波を同時に計測し関連性を調べた。また第三者の手のひらを使っては動測定を試み、オペレーターと第三者の脳波を同時に測定し関連性を調べた。オペレーターの右脳と左脳、あるいはオペレーターと第三者との脳波がα波やθ波で同調したとき波動測定値に妥当性が見られ、脳波の同調がないときには、波動測定値に妥当性が見られなかった。二人の脳波がα波やθ波で同調するためにはお互いに心と体をリラックスさせ、雑念を捨てた無心の境地になることがポイントのように思われる。
1. はじめに
日本では古来から「手当て」とか「手かざし」による治療が行われてきた。その多くは暗示効果やプラセボー効果としての心理・生理学的な反応として理解できるが、必ずしも暗示やプラセボー効果ではかたずけられない現象もある。しかも、明らかに痛みが緩和されたり、疾患が治癒されるケースが稀ではない。
この場合、何らかのエネルギー(生命エネルギーとか宇宙エネルギー、気のエネルギーなど)が作用するという考え方もあるが、例えば、NK細胞には有効に作用し、癌細胞には作用しないというような、人間にとって都合のいいエネルギーが存在するとは考えにくい。
それよりは何かを媒介とした、細胞間コミュニケーション( inter cell communication )や器官同士のコミュニケーション( inter organ communication )が存在して、送り手の細胞から受け手の細胞へ情報が伝播し、その情報にも基づいて、受け手側の細胞の免疫機構が活性となり、治癒力が高まる、と考えた方が理解しやすい。
このような観点から本研究は、情報伝播のメカニズムを解明することを目的として、情報を送る側に対して、いかに効率よく情報を発信させるか、受ける側に対して、いかに最大もらさず情報を受け取るかの条件を探索した。
具体的には、細胞の活動の制御中枢である脳に着目し、脳の電気生理的な指標である脳波を測定した。実験(1)ではヒーリングを行っているときのエネルギー(情報)の送り手と、受け手との脳波の関係を調べ、実験(2)では「気」を送ることによって相手が「飛ばされたり」「飛ばされなかったり」したときの脳波を計測し、相互の関連を考察した。
2. 実験の概要
実験は、ヒーリングの専門家とボランティアに協力してもらって行った。脳波測定は、被験者の心理・生理的な負担を軽くし、測定していることがリーディングやヒーリングの邪魔にならないように心がけた。

具体的には2チャンネルの超小型脳波計(日立超LSIデバイス製 Mind NAVI)をパソコンのシリアルポートに接続し、1チャンネルは送り手側の脳波、他の1チャンネルは受け手側の脳波を計測した。

脳波計測にはよく臨床脳波計が使われるが、被験者に与える心理・生理的負担が大きく、測定は正確であっても、被験者の心理・生理的な状態が複雑となり、何を測っているのか分からなくなる。しかも、測定装置が備えられているところで実験しなければならず、測定が制限されてしまうので、今回の目的のような実験には適さない。

実験(1)の測定(写真1 参照)では、始めの1分間、お互いを意識しないで目を閉じ、心と体をリラックスさせている状態の脳波、次の5分間はクライアントはそのまま目を閉じていて心と体をリラックスさせ、ヒーラーは相手の体の状態をリーディングする。さらに次の5分間で、クライアントはそのまま目を閉じていて、ヒーラーが相手の体の気になる部分に「気」を送りヒーリングしている状態の脳波を計測した。

実験(2)の測定では、始めの1分間はお互いに心と体をリラックスさせている状態の脳波、次の1分間で「気」を送り、相手を飛ばしたときと、同じように「気」を送っても飛ばなかったときの脳波を調べ比較した。

3. 実験結果
実験 (1)
始めの1分間では、お互いに意識せず心と体をリラックスさせている状態であるが、受け手側の脳波にはα波とβ波が混在した平均強度が35μV以上の強い波形が観察された。写真4の上段が受け手側の脳波
で、グラフの青色はθ波、緑色がα波、ピンク色はβ波を表している。下段のヒーラー(送り手)の方も周りが気になるのかβ波が混在しているが、平均強度は15μV以下と低く、θ波が優位に観察された。ヒーラーの内省報告では、集中しにくかったがリラックスはできたという。
次の5分間はリーディングで、その様子と二人の脳波を写真2に示す。ヒーラーの脳波の振幅は小さくなり、大脳新皮質の電気的な活動が沈静化されていることが伺える。ヒーラーの内省報告では思考したりイメージを描くのではなく、ただあるがままに身を任せており、何かを感じるかも知れない状態を待っているという。そしてクライアントの腎臓が気になったらしい。 クライアントは、始めの1分間と何ら変わることなく心と体をリラックスさせているだけだが、脳波は強い影響を受けて振幅が小さくなっている。クライアントの内省報告では特に何も感じなかったらしい。
引き続き次の5分間では相手の腎臓に「気」を送り、その部分が健康になるようにイメージした後、あるがままに身を任せていたという。写真3に示すようにヒーラーが手をかざすと強いα波とθ波が観察され、すぐに振幅が小さくなった。このときに「気」が送られたのではないかと思われるが、受けて側には何の変化も観察されず、クライアントは何も感じていなかった。
ところが10秒ほど遅れてクライアントの脳波に強いα波とθ波が観察された。これはヒーラーからの「気」の影響を受けたものなのか、クライアントの自発的な体動によるものかは分からない。写真4を見る限り、二人のα波やθ波は同調していないが、何らかの影響があったものと思われる。
実験(2)
より客観的に変化が観察できるものとして「気」を送ることによって相手が飛ばされてしまう現象があるが、このときの脳波を観察した。
「気」の送り手は浦田紘司氏で、この10年間で「氣」による治療を1万人に施しているという。浦田氏に協力してもらい、「気」を送って相手を飛ばしてしまう実験を試みた。写真3はそのときの様子を示す。互いに向かい合い心と体をリラックスさせて「気」を送る準備をしているときで、お互いの脳波は振幅が小さくなっており無心の状態だと思われる。送り手の脳波にはθ波(7.5Hz)が強く観察された。それに伴い受け手の脳波にもθ波(7.5Hz)が強く現れ、その後、共に脳波は振幅が小さくなった。
相手が飛ばされるのを少し意識して「気」送ると、手かざしや、特別の姿勢をとらず、それまでと同じ姿勢でも、受けて側は飛ばされたしまった。このときの二人のθ波(7.5Hz)は完全に同調していた。
写真4は、一連の実験の脳波を示したもので、上段が受け手の、下段が浦田氏(送り手)の脳波を示す。始めの1分は(図の左半分)何もせずにお互いに心と体をリラックスさせているだけの約束だったが、意識しなくても勝手に「気」が出てしまうのか、送り手の脳波には強いθ波(7.5Hz)が発生して、少し遅れて同じ周波数のθ波(7.5Hz)が受け手側の脳波にも現れ、体が揺れ始めた。
1分後(図の右半分)、「気」を送るように合図するとと、送り手の脳波に強いθ波(7.5Hz)が現れ、同時に受け手の脳波にもθ波(7.5Hz)が現れて体が飛ばされてしまった。このとき脳波測定の電極が外れて測定が不可能となった。
4. 考察
ヒーリングによる治療効果は、「気」の送り手と受け手との間で、何らかのエネルギーのやり取りがあると考えられている。しかし、遠隔治療も行われているので、現代物理学でいうエネルギーの概念とはなじまない。
そこで、何らかの媒介によって情報が伝達され、その情報によって細胞の免疫機構や本来の機能が活性になるというモデルを想定する。情報の伝達の場合には、テレビやラジオの送信機と受信機のように、情報のキャリアである電波の周波数を合わせることが必要で、チューニングされなければ情報は伝達されない。
 チューニング特性がよければ、遠距離で極めて微弱な電波であっても正確に情報を受信できることと同じように、取り継ぎ手と受け手とのチューニングがよければ、すばらしいヒーリングが成り立つと考えられる。そのチューニングをコントロールする中枢が脳であり、脳波である程度は推測ができる。これまでの実験によると、取り継ぎ手と受け手とが

1. 心と体をリラックスさせ
2. 無心の境地で脳波の振幅を小さくする
3. ほんの少し測定対象に意識を向け、コードを設定する
4. その後、心と体をあるがままの状態にゆだね

というような状態にコントロールできれば、うまくチューニングされるように思われる。
このことは、ヒーリングの熟練者が「欲望を捨て、虚心坦懐に、鼻歌を歌うがごとく気軽にやるとうまくいく」という表現と合致している。
脳は階層構造になっており、奥の方の脳幹は、「何が何でも生きる働きの爬虫類の脳」であり、その外側の視床や視床下部は「より逞しく生きる働きの哺乳類の脳」であり、その外側に大脳新皮質があって「より満足に生きる働きの霊長類の脳」がある。脳波は脳の一番外側の働き、大脳新皮質の電気的な活性度合いを観察していることになる。
仕事や勉強、スポーツや趣味などは大脳の新皮質の働きが支配して知恵や意欲や力がコントロールされるわけだから、α波が強く出ている状態の方が集中力が高まって力が発揮されるが、細胞の免疫機構や病気の治癒力は、脳幹や視床下部、辺縁系などの働きで支配されるので、大脳新皮質で支配されない方がいいのかも知れない。
視床下部に視交差上核と呼ばれる神経核があり、俗に体内時計といわれている神経細胞の集団だが、この細胞集団から7.5Hzの基本周期を持つ信号が出力されているという報告がある。写真8に示すケースは、θ波(7.5Hz)で互いに同調したとき「気」で飛ばされたわけで、この場合のθ波は、大脳の新皮質で発生したものではなく、視床下部の視交差上核から発信されている信号を観察したのかも知れない。
これらを明確にするためには、地震の震源地を調べる手法と同じように、頭部表皮の数箇所にセンサー電極をつけ、それぞれから検出される脳波の時間差(位相のずれ)を分析すればいい。今後、さらに測定事例を増やし分析していきたい。
また、かつて浄霊における取り継ぎ手と受け手との脳波を計測したことがあったが、そのときもお互いにθ波が同調していたことが特徴的であって、今回の実験と対比すると、明らかに脳の奥の方の機能が介在して、健康になるための情報が授受されていたのではないかと思われる。
人が飛ばされるという派手なパフォーマンスではなく、人が本来もち合わせている健康維持力をお互いにシェアーしあうことが大切だと思われる。
参考文献
1) Introduction to Quantitative EEG and Neuro-feedback James R. Evans, Academic Press
2) Getting Well Again, Carl O. Simonton, James Creighton, Boston
3) Executive ESP, Douglas Dean and John Miharasky, Prentice Hall London
4) The Right Brain, Thomas R. Blakeslee, Anchor Press, New York
5) 脳力開発の成功例 志賀一雅 朝日出版
6) 潜在脳 志賀一雅 ダイヤモンド社
7) 前頭葉α波のフィードバック増強 志賀一雅 バイオフィードバック学会誌
(Ⅰ)バイオフィードバック研究Vol.9、1-4、1982
(Ⅱ)バイオフィードバック研究Vol.9、5-9、1982
(Ⅲ) バイオフィードバック研究Vol.10、51-53、1983
8) アルファ脳波の活用 志賀一雅 電子情報通信学会誌、Vol. ET91-98、49-54、1991
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