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NEW VISION WEB版 vol.08
vol.8[掲載内容]
『理事長からの手紙』
 イプラス脳力開発トレーニング協会 会長 志賀 一雅[ CLICK ]


『若者の仕事と脳力開発トレーニング』
 対談 志賀 一雅 × 鳥居徹也[ CLICK ]


『イプラス実践の記録』(後編)[ CLICK ]

『自分を知り世界を知るビジョントレーニング』
 米国公認オプトメトリスト 内藤 貴雄 連載 第四回[ CLICK ]


『全国のイプラスジムより』イプラスジム新潟[ CLICK ]

『イプラス体験記』[ CLICK ]

 会長からの手紙
志賀一雅 ご挨拶 今年は幸先よく元日の朝、NHK総合TV「スタジオパークからこんにちは」で、イプラスジムの脳力開発プログラムが紹介されました。
生放送で、スタジオにシンガンを持ち込み、出演者たちが競い合っている様子が全国ネットで放送されたわけです。
 単なる遊びではなく、楽しんでいるうちに視野が広がり脳が鍛えられる、広い視野に立って物事が考えられる、という解説も添えてのことでしたから、多くの方が印象づけられたと思います。
 春には新たに五カ所のジムが加わり、会員数も一〇〇〇人に達するのではないかと期待しています。そこで、今年のイプラス脳力開発トレーニング協会の活動スローガンを「チャレンジ!」としました。それぞれの立場でチャレンジしてください。
 もともと私たちの脳は宿命的に満足を求めて生きるようにプログラムされています。ですから満足を感じないと不具合が生じます。
 心身症や神経症、生活習慣病や鬱など、発症の根本原因は満足感の欠乏だと考えられています。具体的には、脳幹の満足中枢A 神経核からドーパミンが分泌されないことから生じます。これが習慣化されてしまいますと鬱やパーキンソン病にこの機関紙が皆様のお手元に着く頃には既にスタートしているはずです。五〇回の連載ですので、ぜひお読みいただき、ご意見やご要望をお寄せ下さい。可能な限り反映させたいと思います。なってしまいます。
 私たちは、とかく客観的な満足を求めがちですが、大切なのは脳の中の反応ですから主観的な満足です。誰も気がつかない、誰も認めてくれなくても、自分なりに努力し、我ながら頑張った、と思えたとき、脳幹からドーパミンがたくさん分泌されるはずです。
 そのためには困難なことに立ち向かい、前例がなくてもチャレンジしましょう。仮に失敗したら、それは貴重な経験となり、畑で言えば肥やしになります。肥やしの効いた畑には立派な作物が約束され、収穫の喜びも大きいことでしょう。
 イプラスジムは前例のない新しい試みですから、運営も大変でしょうし指導も困難なことが多く、工夫が必要です。会員の皆さんにとっても一〇〇%成功する方法をお伝えできませんから、それぞれの立場での工夫が必要です。
 でも困難であればあるほどチャレンジのやりがいがありますし、成功したときの喜びは最高です。その喜びを心にこめて、毎日を過ごしましょう。

イプラス脳力開発トレーニング協会 会長
志賀 一雅

 対談 志賀一雅 × 鳥居貴雄 「若者の仕事と脳力開発トレーニング」
教育現場の最前線で多くの学生、教師を見つめ書き上げた『フリーター・ニートになる前に読む本』が話題の鳥居徹也氏と志賀会長との対談です。著書が新聞などに取り上げられ、講演で全国を飛び回る毎日の鳥居氏。対談中ご自身が納得いくまで説明聞く姿から、好奇心旺盛な勉強家の印象を受けました。では、情熱的な鳥居氏との対談をお楽しみください。
 全国の小中高校を駆け巡る
志賀 今日はお時間をいただき、ありがとうございます。実は全国展開していますイプラスジムのトレーナーが、先生のご著書「フリーター・ニートになる前に読む本」を読み、フリーターやニート問題に対する先生のお考えや指導方法をお聞きして、私たちの活動の参考にさせていただきたいとの要望があり、ご多忙のところ恐縮でしたが対談をお願いした次第です。
鳥居 よろしくお願いします。
志賀 先生は、昨年文部科学省の委託を受けて全国一二〇校もの小中高を巡り「フリーター・ニートになる前に受けたい授業」の講演をされたそうですね。3日に1校の割合ですから大変でしたでしょう。あまり聞く気がない生徒に対しての講演でご苦労されたと思いますが、そもそものきっかけは何だったのですか?
鳥居 私は船橋情報ビジネス専門学校の広報担当で、10年間千葉県の高校生に自校のアピールをしていました。専門学校はご存知のように仕事に直結していますので、働くことについてもサービスで語っていました。働くことは生きることであり、生きることは自立することと位置づけ、そのために意欲をもつことや挑戦することの大事さなどを話したのがそもそもの始まりでした。その内容を小冊子にまとめたものが新聞に紹介され、それがきっかけで全国の学校からお招きいただくようになりました。
志賀 フリーターは今二〇〇万人位いるそうですね。その原因は企業の求人が少ないからですか。
鳥居 それもありますが、むしろ自信や意欲の低下が大きいと思います。少子化で、高望みしなければ、大学まで苦労なしにエスカレーターでいく、そして最後の就職で試されてしまう。
志賀 なるほど。大学までは簡単に過ごせたけれど卒業してからが問題なのですね。
鳥居 ええ。入社した先でのコミュニケーションができないようですね。いきなり取引先や上司、先輩に怒られてすごいショックを受け、それで嫌になり、すぐに辞めてフリーターになるケースもあります。おっしゃる通り、求人が少なく、やむをえずフリーターという人もいます。だから社会が悪いというのも一理ありますが、私はそれよりも贅沢なフリーターが多いように感じますね。
志賀 もっといいところがあるかもしれないと探し求めているのでしょうか。自分に適した職探しというか・・・。
鳥居 自信がないから自分に合う仕事が見つからないと言い訳する人もいます。私は、とにかく一歩踏み出してみなさい、と言いたいですね。講演では、「歴史」「地理」「脳科学」「心理学」この4つの軸を意識し、自分の体験、具体的な実例を示して、チャレンジする気持ちを高めてもらいたいと、日々勉強しながら全国を駆け巡っています。というとカッコいいのですが、実は昨年は体調が悪い期間がずいぶん長かったのです。ストレスでしょうか。疲れが溜まりっぱなしでしたね。
 疲れをとる秘策
志賀 そうでしょうね。その疲れをとる効果的なメンタルトレーニングがありますから試してみてください。疲れは満足感の不足から生じますから、寝るときに満足感を補うわけです。寝床に入ったら何も考えずに深呼吸して、息を吸うときに「よかった」、息を吐くときに「ありがとう」と思いながら眠りに就くんです。何がよかったのか、誰に感謝するのか考えないことが秘訣です。実は、喜びと感謝の気持ちになったとき脳から分泌される物質で全身の細胞の疲れが取れるのです。満足感が不足のまま寝ますと脳内物質の分泌が少ないので疲れが残ってしまうわけです。徹底的にやってみてください。
鳥居 大変いいことを聞きました。ぜひやってみたいと思います。
そういえば、現在は学校での仕事や講演、執筆などに誇りを持って意欲的に取り組んでいますが、かつては、忙しさやプレッシャー、仕事をする環境のことで落ち込むことがありました。そのとき読んだ本に「ありがとう」と何度も唱えるといいと書いてありました。でも私は「ありがとう」という言葉に抵抗があって、別の本で読んだ「やってやれないことはない、やらずにできぬことはない」というのを、常に頭に浮かべていたんですよ。あの言葉は、私が辛いときに支えになってくれましたね。
志賀 そうでしたか。前向きにチャレンジ! そうすると頑張れますが疲れるでしょ? もっと気を楽にしないと・・・。「ありがとう」だけでは抵抗を感じても、「よかった、ありがとう」ならどうですか?落ち込んでいるときに「ありがとう」では不自然ですが、この程度で「よかった」と思えれば、自然に「ありがとう」という気持ちになれます。専門的になりますが、満足を感じる神経回路が働くと、その信号が脳幹にあるドーパミン作動系の満足中枢を刺激してA10神経核が活性になり、その影響でA9神経核も働いて、喜びの表情や「ありがとう」という表現など、動作・行動に現れてきます。
鳥居 おもしろいですね。
志賀 A9とA10がペアで働く構造になっています。ですから「ありがとう」だけでは無理があり、「よかった、ありがとう」でなければなりません。
鳥居 そうですか、「ありがとう」の前に「よかった」が必要なんですね。
志賀 接客業などで、お客様に「ありがとうございます」と表現するのも、その背景には、来てくれてよかった、満足してもらえてよかった、という喜びがあり、その喜びの表現として「ありがとうございます」であれば自然ですが、喜びを感じないで「ありがとう」だと、脳の活動がスプリット(分離)して不具合が生じ、いわゆる職業病になってしまいます。
鳥居 単なる「ありがとう」の連発にはちょっと偽善的な、うわすべりした感じがあります。「よかった」と「ありがとう」はセットなのですね。
 喜びを感じて感謝する
志賀 脳の構造からいうとセットです。感謝が大切、「ありがとう」を一〇〇回とか一万回唱えるといい、という話もありますが、「よかった」があれば1回でもいいと思いますよ。私たちの脳は、生物進化の過程で宿命的に、より満足に生きるようになっていますから満足を感じれば調子がよくなります。お子さんがお手伝いをしてくれたら、普通お母さんは「ありがとう」と感謝するでしょうが、「大助かり!」「嬉しい!」「よかった!」と喜びを表現してから感謝するといいでしょう。お子さんは、お母さんが喜んでくれたことに満足して、ますますいい子になるはずです。
鳥居 「あー、よかった。助かったわ。ありがとう」というんですね。わかりやすいです。
志賀 ときどきテレビを観ていて違和感があるのは、料理でおいしいと褒められると決まって「ありがとうございます」、服装のセンスがいいのを褒められて「ありがとうございます」と言いますが、お口に合ってよかった、褒めていただけてよかった、と喜びを表現した方が自然だと思うのですが。
鳥居 なるほど、「ありがとうございます」だけではおかしいですね。「あー、よかった、似合うかどうか気にしていたんだ。ありがとう」が普通ですよね。人間の会話として。
志賀 ありがとう」は、あまりないこと、有り難いことですから、それがあるので「よかった」ことになりますね。今までにこんなによかったことはなかった、だからありがたい=ありがとう、になります。
 学校で脳力開発
志賀 ところで先生の学校、船橋情報ビジネス専門学校で、授業として脳力開発プログラムを採用していただいていますが、いかがでしょうか?
鳥居 ええ、大変評判がいいようです。もともと出席率はいい方でしたが、さらによくなり、授業中の集中力が高まって意欲的になったとの報告を受けています。
志賀 脳力開発を実践していただくと、授業中の集中力や学習意欲が高まることもありますが、卒業してから社会に出て、ストレスの多い環境でも耐えられる、心も体も健康で前向きに進むことができるのが特徴なんです。職場の人間関係もよくなりますし、先生がご指摘のコミュニケーションが抜群によくなります。ストレスに対する耐性も強くなり、挫折しなくなります。
鳥居 いやぁ、それが一番大切ですね。どんなに知識や技能を身につけても、健康を損ねたり人間関係が悪いとどうしようもありません。これは、今まで生徒の気質や人柄に委ねていて、どう教育したらいいのかわかりませんでしたが、脳力開発で可能ならすばらしいことですね。それから私は夢を実現するのもいいのですが、むしろ夢破れたときどう対処するかが大切だと思っています。成功した人たちは、いきなり成功したのではなく、大失敗したり騙されたり、それを乗り越えたからこそ成功があるわけですから苦難を克服する力が必要ですね。
志賀 先日、東京女子学院の酒井先生と一緒に授業参観させていただきました。教室の後ろから見ていて、私語も居眠りもなく、全員が授業をしっかり聞いていて、酒井先生もびっくりされていました。
鳥居 あれにはちょっとした秘密がありまして、入学式当日から担任がクラスの生徒の名前を全部丸暗記しているんです。これは、心ある教師が自主的に行っていた実践なのですが、その先生のクラスはモチベーションが高かったので、今は全校で取り組んでいます。
志賀 なるほど。
鳥居 入学者は秋ごろからわかるので、そこから4月まで教師が入学予定者の資料を見て名前を覚えます。見ているうちに愛情が湧いてきます。全然違いますね。初対面の教室で、「ちょっと佐藤さんこっちを向いて」「山田君静かにね」と言うと、なぜ名前を知っているんだと驚く。見ていて面白いのは、先生がわざと出席簿を閉じて、みんなの名前を呼ぶときです。すると教室に魔法がかかります。この学校は今までの学校とは違う、先生は自分を1人と見てくれたという空気が作られる。その後、簡単な検定試験を全員一〇〇%取得させます。するとさらに魔法が加速する。最後に秋にある一番大事な国家試験に向けて、指導、応援すると、そこで仮に落ちたとしても、次にがんばろうとなる。集団の教育力ですね。これを学校全体で行っているというのが、わが校の強みです。
 アルファ波で共鳴
志賀 すごいノウハウですね。脳波の視点でいうと、アルファ波は共鳴の振動波ですが、その魔法にかかったような状態は、おそらく先生と生徒とのアルファ波が共鳴しているのではないでしょうか。何が共鳴かというと、脳の中にたくさんの神経回路があって、たとえば考える神経回路、手足を動かす神経回路、自律機能をコントロールする回路などの働きが共鳴する、つまり揃って動く。だからすごい力が結集される。生徒の名前を覚え、生徒の名前を呼ぶときの教師は、アルファ波が強いと思いますね。そうすると周辺も強く共鳴する、場に何かが起きる。
鳥居 波動ですか?
志賀 今のところ科学的に証されていないですから、いろいろな表現がありますが、何かが出ると思います。生徒たちの脳にもアンテナがありますから、目や耳以外で情報をキャッチしてアルファ波が強くなる。つまり集中できるようになる。
鳥居 以前、後ろから教室の様子を見ていたのですが、名前を呼び始めたときに、明らかに空気が変わりました。
志賀 それは、きっと名前を呼ぶときに先生はすでに呼ぶ前からアルファ波が強く出ていて、生徒は名前を呼ばれる前からアルファ波の影響を受けたのだと思います。先ほど先生に脳波を測定していただいて、とてもアルファ波が強かったですよね。ということは、おそらく大勢の前で先生が話をされるときもアルファ波が強いと思います。アルファ波の強い人の話しを聞いていると聞いている人の脳波もアルファ波に共鳴して強くなり、集中して聞けるようになると思います。そうなれば気持ちはどんどん伝わっていくはずです。
これまで、音楽療法や鍼灸治療、気功法などで、二人の脳波を同時に調べると、お互いがアルファ波で強く共鳴しているときに治療効果が高まっていることが分かっています。その類推から、先生が強いアルファ波で授業すれば、生徒はアルファ波で共鳴して勉強できるようになると思います。
鳥居 おっしゃっていることは経験としてすごく実感できます。
 ニート対策は脳力開発で
志賀 ところでニートについてですが、これは「Not in Education, Employment or Training」の頭文字ですね。50年位前にイギリスで、働かず勉強も訓練もしない若者が増えて社会問題化したときの表現だそうですが、いかにもアングロサクソンの経済的な豊かさが生みだした気質のような気がします。今20万人ぐらいいるそうですね。ゲルマンの血を濃く受け継いだドイツやフランスではどうなんですか。
鳥居 ドイツやフランスではあまり聞かないですね。
志賀 なるほど。ところが日本はそれほど豊かでないのにニートが増えて、80万人ですか?
鳥居 はい。日本とイギリスでは、ニートの捉え方が違うので一概には比較できないですが、数字的にはそうですね。日本の場合、もともとニートはいたけれど、農家がニートを吸収して表面化していなかったのではないか、という人もいます。
志賀 なるほど。
鳥居 今はサラリーマン家庭になって、顕在化している部分もあると思います。実は、私はニートになってしまった方への処方箋がまだわかりません。以前、テレビの取材で、東京の若者自立塾のいろいろなバックボーンを持つ3人のニートの方と話す機会がありました。その際びっくりしたのが、みなさん「あっという間に時間が過ぎた」と異口同音に時の経過を表現したことです。さらに自立塾の方に聞くと、ニートの親御さんも同じように「あっという間に時間が過ぎた」とお話されると。これはつまり、思考が停止している状態ではないかと感じました。思考を動かすには何かきっかけが必要です。それは、今までにない、全く新しいやり方を用意しないとダメだと思います。志賀先生のされていらっしゃるメンタルトレーニングによって、脳を活性化するということを、若者自立塾でやってみるのはどうだろうかと思います。
志賀 これまでの私のクライアントにはニートがいないので効果はわかりませんが、うつ病に効果があったことは確かですから可能性はありますね。
鳥居 イプラスジムと自立塾とが組んで指導されたらいかがでしょうか?脳トレーニングを実践してもらうことで、アルファ波が増え、ニートの人たちがやる気になれば、大変な貢献になりますよ。
志賀 そうですね。実践する価値がありそうですね。ニヒルな言い方になりますが、ニートを育てたのは親であり社会ですから、本人を鞭打っても解決できないかも知れませんね。脳は学習するマシンですから、ニートになるように正直に学習したわけです。目的を失い価値観を消失した人間の行き着く先を象徴しているのでしょうね。目的無き社会の成長とキリスト教的価値観、倫理観を痛烈に批判したドイツの哲学者ニーチェの予言が現実化しているような気がしちゃうんですね。皮肉なことに、理性で良かれと思ってやるとおおむね悪い結果になりますね。だから、感情で「よかった」と思うことをやった方がいい。例えば、わが子がニートだとすると、理性で対処するのではなく、アルファ波の出る脳状態にして、わが子が元気で仕事しているもしくは、勉強や練習をしている姿をイメージして、「よかった」と思う。そうなった結果を感情で喜ぶ。本人が脳トレをするのが困難だから、親が脳トレをする。
鳥居 なるほど。親が変わることはとても重要なことだと感じています。その一歩として考え方を変えるというのは、わかりやすいですね。
志賀 先生は、講演を今後も精力的にされると思いますが、よろしければ、いろいろなお話の中で、「よかった、ありがとう」の思い方を広めてください。
鳥居 「よかった、ありがとう」をセットで考えるというのは、すごく説得力がありました。まずは自分自身がやってみます。
志賀 ますますお忙しいでしょうから、疲れを明日に持ち越さないように寝るときにしてください。本日はありがとうございました。今後のご活躍を期待しています。
 対談 雑感
志賀 鳥居先生から、フリーターやニートの現実を聞いているうちに、頭の中ではリヒヤルトシトラアウスの「ツアラトウストラはかく語りき」の楽音ががんがん響いてきた。ツアラトウストラは架空の人物でゾロアスター教の教祖とされている。ドイツの哲学者ニーチェは、ツアラトウストラが語っている形で自説を唱えた。ヨーロッパの産業革命による経済成長と、キリスト教的価値観・倫理観に対するニヒルな批判をしながら一〇〇年後の社会を予言していた。
 まさにいま、ニーチェの突きつけた「ニヒリズム」の社会になっているようにも見える。現代の人間像を見ると3種類が浮かび上がってくる。
 その一つは冷笑主義(シニシズム)で、世の中の出来事を冷ややかに批判し、建設的な活動に参加しない。ニートですね。
 他の一つは快楽主義(ヘドニズム)で、市場経済をずる賢く操り、利益をかき集めて豪邸や装飾品で身を飾る刹那主義。勝ち組ですね。
 もう一つは熱狂主義(ファナティシズム)。さしたる深い根拠も感動も無いはずなのに熱狂する。ある種の新興宗教や韓流ブーム。スポーツや音楽に熱狂する。
 私たちは、この3つをそれぞれ兼ね備え、可能な範囲で満喫しているのではなかろうか。だとすればニートを責めることはできない。いずれにしても目的の無い成長がもたらせた落し子でもある。
 先進国とは言うものの、どこへ進むのかが分からずにひたすら成長し続けているのが現代でもある。対談しながら、ふとこんな思いが浮かんできた。
 イプラストレーニング実践の記録 (後編)

前号に引き続き、現在イプラスジムでトレーニングを実施されている2人のボクシング元東洋太平洋チャンピオンと担当トレーナー、担当カメラマンの方にご参加いただいた座談会「かつて拳を交えた2人のボクサーが語るイプラストレーニングの可能性」についてお届けします。

山口真吾
1979.11.25生 プロボクサー
東京都武蔵野市 出身
Record:23戦17勝(7KO)4敗2分
出入りの激しいハイピッチなボクシングで相手を切り崩していくボクサーファイター。相手のボクシングに合わせてトリッキーな動きで翻弄する懐の深さもある。'98年10月プロデビュー。'02年2月23日 WBC世界ライトフライ級王座に挑むも10RTKO負け。
'03年5月12日OPBFライトフライ級王座獲得3度の防衛後'05年8月8日WBA世界同級13位升田貴久(三迫)とタイトルマッチを行い、升田が判定3-0で勝利。その後、復帰し世界チャンピオンを目指し練習に励む傍ら、イプラスジムでの脳力開発トレーニングを実施している。

升田貴久
1979.5.24 生 
愛媛県松山市 出身
Record:26戦16勝(4KO)7敗3分
1996年12月プロデビュー。その後一時期ボクシングから離れるも復帰し2004年2月元日本王者横山啓介、2004年6月元OPBFライトフライ級王者林田龍生に判定勝ち。
2004年11月よりイプラスジムに入会し、脳力開発トレーニングを実施。その後、山口真吾との対戦において判定3-0で升田が勝利OPBFライトフライ級王座獲得。名門三迫ジムに7年ぶりのチャンピオンベルトをプレゼントした。その後初防衛戦において12R判定負け。その後引退を表明。現在はイプラスジムに通いながら第2の人生のスタートに備えている。

林建次
カメラマン オフィスミギ所属
写真スタジオを経てカメラマンになるために修行中、バイク事故で右腕の機能を失った。23才~26才までの3年間リハビリと手術を繰り返す。 呼吸するのも困難な痛みとの闘い、未来が見えない不安、不自由な日々を悶々と過ごした。3回目の手術後、カメラマンとして社会復帰することを決意した。現在はボクシングを始め、さまざまな写真を撮り続け2006年4月29日幻冬舎から発売された「若きサムライ その声を聞け」北里洋平編著においても撮影を担当。山口真吾選手と升田貴久さんの友情をつないだボクシングを愛するカメラマン

美濃部 和巳
イプラスジム赤羽チーフトレーナー
2002年イプラスジム赤羽設立スタッフとしてイプラスジムトレーナー資格取得。その後、中高生以上の成人に向けてのメンタル・ビジョン・右脳開発トレーニングを総合したイプラストレーニングを指導。イプラスジム赤羽チーフトレーナー就任後、東京オプトメトリックカレッジ(スクーリングコース)卒業。通常のイプラストレーニングとあわせオプトメトリスト内藤貴雄氏の監修の下、プロスポーツ選手等の個別ビジョントレーニングに従事。山口、升田、両氏の担当トレーナーとして指導。今後さらに学校ならびに企業での指導なども予定している。

 「メンタル」の重要さ

~升田さんは具体的にイプラストレーニングをボクシングと結びつけたときにどんなところが一番良いと感じましたか?

升田 一番の目的はビジョンだったんです。シンガンなんて最初は全然できなかったのですが(笑)でも、イプラスジムに入会して一番重要だと感じたのはメンタルです!山口くんとの対戦の時は最高の心の状態でしたね。勝ってチャンピオンになっているイメージしかなかったです。
僕も試合前に顔をみた時に良い顔してるなって思いました。
山口 僕はイプラスジムに入会してまだ3ヶ月なのですが、僕も第一の目的はビジョンだったんです。でも、イプラスジムでメンタルトレーニングをしたら、以前からイメージトレーニングはやっていましたけど、それがより具体的に実践できるようになりました。
升田 普通の生活でもメンタルは大事だと思います。世界の一流のボクサーは本番の試合もスパーリングのようにやってるんです。

~本番も日頃と同じようにやるっていう事でしょうか。以前プロ野球選手の小久保裕紀さんが「2軍の選手と1軍の選手の実力はプロである以上、そうは違わない。じゃあ何が違うのかといえば、本番で結果を残せるか、残せないか、だと思う」とおっしゃっていました。

山口 本番は色々なプレッシャーがありますからね。メンタル面が一番大事ですよね。
升田 僕は本番でガチガチになっていましたね。

~例えば、私などは大勢の人の前で話しをするときに、緊張している時は視界がすごく狭くなっているのを感じます。皆さんはどうですか?

升田 僕もそうですね。それに相手がやけに大きく(強く)みえたような気がします。

~でも、自分に余裕がある時はパーっと視界が開けて、後方まで全部見渡すことができるということもあります。ボクシングにも共通しますか?

升田 もちろんです。やはり気持ちの持ち方が大きいと思います。僕の場合は一年半ブランクがあって復帰した時に、これからは思ったことをやってやろうと思ってから何かが変わりました。相手が小さくみえるようになりました。

~山口さんはどうですか?

山口 リングに上がった時に感じますね。わかるんですよね、ヤバイ時はなんとなく。

 ボクシングを始めたのは・・・

~それでは、山口さんがボクシングを始められたきっかけを教えてください。何歳の時にボクシングを始めたんですか?

山口 高校を卒業したらすぐやろうと思って始めました。

~升田さんの場合はどうでしたか?

升田 僕は早くて中学3年の時です。でも、高校卒業で始めた山口君の方がチャンピオンになって・・(笑)。

~林さんがカメラマンとしてボクシングとの係わりが始まったのはいつからですか?

10年前に手をケガして3年位リハビリをしていたんです。それでアシスタントの仕事ができなくなりまして、たまたま写真館でカメラマンを募集していたのでそちらで働くことになりました。そこで社会復帰を始めたんですが、かなりビビリながらやってましたね。3年間も働いてないから体力もないし今より13kgも痩せてましたから電車に乗るのも必死でした。その後先輩のアドバイスもあって、何か撮りたいなと思った時にボクシングにたどりつきました。そこから出会いがあって三迫ジムで升田君と知り合いました。

 ボクシング以外の練習をするということ

升田 山口君がイプラスジムに入会してきた時にも言ってたんですけど、みんな強くなるためにどうすればいいか理屈はわかってる。でもわかってるだけでやらない人のほうが圧倒的に多いんですよね。だから「イプラスジムを知ってる」だけじゃなくて「自分でやってみる」っていうのが大きいと思います。
山口 やっぱり自分にとってプラスになる事はなんでも取り入れていきたいって思いますね。僕は、升田君がイプラスジムに通っていて僕に勝ったっていうのが大きいですね。

~山口さんからみた「ボクサー升田」の印象をお願いします。

升田 リングで戦ったときに上手いな~と思いました。全然パンチが当たらないんですもん。全部よけられました。試合前にビデオで研究して、かみ合うなとは思ったんですけど、全然かみ合いませんでした(笑)

~以前、イプラスジムに来られた元プロ野球選手の方が感想として「なんでワシが現役の時にイプラスジムにめぐりあわんかったんや?」と大阪弁でおっしゃられたんです(笑)お二人は現役の時にトレーニングができてラッキーですね!

升田君はイプラスジムに通って本当に変わりました。山口君もこれから良い結果が出ると思います。
美濃部 山口君がイプラスジムに来たっていうことが本当にすごい事だと思うんです。
升田 僕はめちゃくちゃうれしいです。
美濃部 僕の中では本当に財産です。
今日も美濃部トレーナーから山口君が真面目に通ってるって聞いてすごく嬉しかった。眼の事もすごく気になっていたし、もちろん世界チャンピオンになってほしいっていうのが一番の願いですけど。

~イプラスジムのトレーニングが実際どれ位役に立っているのかっていうのはご本人じゃないとわからないと思うのですが、社会人としても活躍できる基礎を作っていただければと本当に思います。種目によりますがプロのスポーツ選手は現役の期間は限られてるじゃないですか。特にボクシングは・・。そしてその後引退したら何もできないっていうのはすごくもったいない事だと思うんです。すごく貴重な経験をされていますし、その経験を活かして次のステップにできればきっと成功するはずです。

山口 僕も引退してもボクシング関係の仕事がしたいですね。トレーナーっていう「指導する立場」から見てもイプラスに通っているのは意味のある事なんで。
升田 今いいこと言った(笑)。
美濃部 イプラスはボクシングだけじゃなく色々なところで役に立つトレーニングだと思っています。
升田 という事は林さんも入会ですね!(一同爆笑)
山口 もし、僕が引退してトレーナーになったとしたら教えている選手を絶対イプラスジムに通わせますね。

~現役選手として山口さんの現状の目標を教えて下さい。

山口 それはもちろん世界チャンピオンになる!それだけです。

~升田さんの方から山口さんにエールをお願いします。

升田 僕は「元対戦者」として、できる限りサポートしたいです。とにかく今は大ファンなので(笑)
山口 そうですね、升田君からみた僕の悪いところを教えてほしいです。
美濃部

僕はこの二人のボクサーの出会いは偶然ではないと思ってます。これからが本当に楽しみです。

 あしたのために

~現在全国にイプラスジムでトレーニングを受けておられる方が約八〇〇名、学校の授業で約一五〇〇名、いらっしゃるのですが、同じトレーニングを実施する仲間としてメッセージをお願いします。

山口 僕にとっては、まずボクシングがあるんですが、それ以外のところでもイプラスは絶対に自分のためになると思いますので、皆さんにもトレーニングを継続しながら自分にプラスになる事をみつけてもらいたいと思います。
升田 僕もボクシングの為に入会したのですが、実感したのは日常生活で大事なことを教えてもらっているんだなと、全て普通に生きていくうえで大事なことだと気づきました。だから、ボクシングを引退してからも通っています。イプラスジムに入会している方たちには、ぜひがんばってほしいと思います。人生変わりますよ!(笑)本当に。
美濃部

僕はこの二人のボクサーの出会いは偶然ではないと思ってます。これからが本当に楽しみです。

~素晴らしいお話をありがとうございました。まだまだお聞きしたい事がたくさんありますので、とりあえず録音を止めてここから本題に入りましょう(笑)
本日はみなさん本当にどうもありがとうございました。

 「イプラストレーニング実践の記録」座談会に参加いただき、現在もイプラスジムでトレーニングされている山口選手の日本ライトフライ級サバイバルマッチが、去る1月13日(土)行われました。

元東洋太平洋ライトフライ級王者 日本5位 山口真吾 19W 7KO 4L 2D
対するは、 WBAライトフライ級  11位 戎岡淳一 14W 6KO 8L 3D

両者、世界戦線生き残りをかけての戦い…。
試合開始、1、2R 両者右構え。身長リーチで勝るのは戎岡選手。しかし、山口選手は独特の距離感を保っている。
左を刺し合って顔を弾かれたのは戎岡選手。

戎岡選手は待ち構えての強打狙い。それに対して山口選手はすばやく踏み込んでは接近連打を見舞う。
山口選手のオーバーハンドが戎岡選手の顔面を捉える場面が多く見られた。
山口選手はショート連打を叩き込み、攻勢をきっちりアピール。
しかし、3Rでは、飛び込んで連打する山口選手に戎岡選手の右アッパーが当たるシーンも…。

4~9R 中間距離から突き出される戎岡選手のジャブワンツー。しかし山口選手はきっちりブロック。そして、腕の長さで勝る戎岡選手に、左の刺し合いで打ち勝つ山口選手… 腕の長さで劣るもスピードが違うと言うことか…?

 山口選手の右オーバーハンドが戎岡選手の顔面を捕らえる!

戎岡選手も打って出るが、懐に入った山口選手のショート連打に為す術がない。
時折左フックがカウンター気味に入るも後は続かない。
この夜の山口選手は打たれたら打ち返す…の勝ちの方程式をきっちり遂行できたようだ。

一発では戎岡選手が勝るも、トリッキーに出入りする山口選手が終始戎岡選手を脅かし続ける展開となった。

 山口選手の柔軟性が、硬い印象の戎岡選手を苦しめてゆく…

7R以降フットワークを重視した山口選手がさらに戎岡選手を突き放し、飛び込んではまとめ打ち、ポイントを奪い続ける展開…

最終10R … 頭をつけての打ち合いから戎岡選手がショート連打。さらにアッパーが山口選手の顎を突き上げる!!! 戎岡選手にとって、もうKOしか勝利への道は残されてはいないだろう。 が、ここで山口選手も打って出る。いきなりの右が戎岡選手の顔面に突き刺さる!!!! 両者互角の打ち合いを展開…

 終了のゴングがなった…

 HIGEGE91の採点 99-92で山口真吾の勝ち!!

 公式の採点 97-94 100-93 100-92
 以上3-0の採点で勝者…

 青コーナー 山口真吾ー!!!

こうして、山口真吾選手がみごと勝利をおさめられました。皆さんも、今後の活躍に注目し、ぜひ応援してください!

 自分を知り世界を知るビジョントレーニング
内藤 貴雄
米国公認オプトメトリスト
特別視機能研究所 所長
イプラスジム学術顧問
カリフォルニア大学アーバイン校生物学科を経て、南カリフォルニアカレッジオブオプトメトリーを卒業。 我が国では数少ないドクター・オブ・オプトメトリーの称号を得る。 同時にカリフォルニア州の開業ライセンスも取得する。 '92年「特別視機能研究所」をスタートさせ、元ボクシングチャンピオンの薬師寺保栄や飯田覚士など様々な分野のスポーツ選手から小・中学生にいたるまでのビジョンケアをおこなっている。著書に「眼で考えるスポーツ」(ベースボールマガジン社)他多数。

 第4回 生活の中のビジョン

照らし合わせ

  私たちは、町の景色や駅の名前、道行く人や同僚の顔など毎日色々なものを眼にします。それが見慣れた映像であればあるほど、特別な注意を払いません。見るという行為は、毎日の生活の中であたりまえすぎて、特別吟味する必要すらないと感じています。
 ところが、眼は網膜に写った映像をただ眺めているわけではありません。脳と一緒に活発に仕事をしています。その仕事とは、網膜から送られてきた情報を理解するため、一瞬のうちに情報の”照らし合わせ“をおこなうことです。その映像に意味を持たせようと、「すでに脳にある情報」へ答えを探しにいくのです。
 この「すでに脳にある情報」とは、脳の側頭連合野と呼ばれる箇所にあると考えられており、オプトメトリストは、これをメモリーボックスと呼びます。このメモリーボックスは、私たちの「見る」あるいは「感じる」に多大な影響を与えます。

メモリーボックス

 メモリーボックスは簡単に言えば膨大な数の”引き出し“を持つキャビネットのようなもので、過去に脳に保存された視覚情報はもちろんのこと、他の五感や体性感覚などから脳に届いたさまざまな情報が、分類されながらぎっしり入っているのです。
 例えば、味覚は、塩味、甘味、苦味、渋味、聴覚は、音色、調子、音質、ボリューム、触覚は、痛み、かゆみ、圧力、手触り、かたち、嗅覚は、甘いにおい、くさみなど。そして視覚については、色、形、大きさなどの他、スピード、動き、距離など、実に多種多様な感覚の情報群です。
 眼から入った情報は、メモリーボックス内の視覚の引き出しにある情報と照合され、この映像は「これだ!」と決定すると、脳はそう見て認識するというわけです。このとき同時に、メモリーボックス内にある他のさまざまな感覚情報からも影響を受けることになります。つまり、「見る」という行為は、ただ単に網膜に映った情報だけでなく、他の感覚の経験をも通じて、眼から入ってくるイメージを解釈、理解していくプロセスであるのです。

いたずら

このメモリーボックスが、時に”いたずら“をします。
 ディズニーランドなどのようなテーマパークの乗り物の中には、自分はじっと座って動いていないのに、周りの景色の映像が次々と変わるため、自分が動いているような錯覚を受けることを利用したものがあります。そういった動く景色の映像を視覚的に感知することにより、脳がメモリーボックスの中で、過去に体験した自分の動きやスピード感まで引っ張り込んで錯覚を起こし、実際に空を飛んでいたり、滝底に落ちていったりするような動きを感じ、気分が悪くなる人もいます。
 また、幽霊なども典型的な例といえます。ある状況で、ある時間に、女の幽霊が出るといった話しをさんざん聞かされている人は、小枝にひっかかった白い布きれ一枚を見ただけで、そこに青白い女性の顔が疑いもなく、くっきりと見えてくるのです。白い布きれの視覚情報は、幽霊を信じる人にとって、まさにタイムリーな場面で、脳がメモリーボックスの中から幽霊の姿と引き合わせてしまい、「確かに見た!」ということになってしまうのです。

声が聞こえる

 もちろんメモリーボックスは、いたずらばかりするわけではありません。ボックスの中の情報量が豊富で、整頓具合が良く、中身の質が高いと、私たちの視覚はより研ぎ澄まされることになります。つまり”第2の眼“となるメモリーボックスの質を高めておくことが、「よく見えている」状態をつくるためにたいへん重要になるわけです。
 人気コミック「ブラックジャックによろしく」に登場するカリスマ医師のモデルとして知られる、大和成和病院の南淵明宏先生は、日本を飛び出し海外でひたすら腕を磨いてきたという異色の心臓外科医です。何よりも年間手術数二〇〇件以上という数字が、先生の実力のほどを示しています。
 ときに手術の後、「もう一度、胸を開けろ」という”声が聞こえる“ことがあると、南淵先生は言います。実際に胸を開けてみると、ひどい出血が起こっているそうです。「それは医療の現場でのたうち回って、傷ついて、生傷が絶えないような人にしか聞こえてこない(中日新聞取材記事より)」と先生は言います。
 南淵先生の脳の中には、元々の知識に加え、海外の実学重視の現場での数多くの生の医療体験によって作り上げられた、優秀なメモリーボックスが存在するに違いありません。それにより、通常では見えないものを感じ取ることができる、とても鋭い”心臓外科医感性“が宿っているのでしょう。

勉強好き

 メモリーボックスを磨き、より「よく見えている」眼をつくる究極のヒントは、「勉強好き」という言葉にあるのかもしれません。
 人生で何の道を極めようとするにも、鍛錬をくりかえすことの重要性は無視できません。しかし、好きであれば、それは苦痛になりにくく、また好きであればどん欲になり、色々な情報が脳裏、つまりメモリーボックスに残ります。さらに、感情が入り、他の感覚との結びつきが良くなります。するとメモリーボックスが優秀になり、他の人に見えないものまで見えてくるというわけです。
 第六感は「ぴんときた!」「そんな感じがした」などという無根拠で具体性もないことのように聞こえます。しかし、実際には、とても科学的な根拠があるのではないでしょうか?
 ジムレポート イプラスジム新潟

 トレーナーの植木朱里です。
 イプラスジム新潟はJR古津駅近くの「ビッグカードーム タンポポ」という、カーセンターの一角にあるのですが、何故クルマやさんの中にイプラスジムがあるのかというと・・・

 イプラスジム新潟は、新潟市朝日(旧新津市)にて『一度のご縁を一生のお付き合いに』という理念の下に『「ゆりかごから墓場まで。」「全メーカー、全車種取り扱い」お車のことなら何でもご相談に乗れる会社です。』というテーマの通り、総合的な自動車の販売から整備などを手がけている「株式会社川内自動車」の新事業として導入しました。
 そもそもの始まりは代表の川内敏夫社長が、あるセミナーで存在を知り「ぜひ新潟にもイプラスジムを!」ということで、約1年半がかりで準備し2005年6月にオープンしました。イプラスジム新潟は「日本最大のイプラスジム(100坪以上あります!)」です。その広々とした空間にぜひ遊びに来てください。本当にリラックスしていただけると思いますよ!私の今年の目標は「のんびり過ごす事」です。一日一笑☆笑顔を第一にがんばっていきます。皆様とお会いできることを楽しみにしております。

 岸沢香織のイプラス体験記

レッスンに行ったこの日、なんとなく元気が出ない1日でした。ところが、レッスンを終え、トレーナーさんたちとお話していると、「気分が沈んでいたのですが、元気になりました」と自然に話していた私。トレーニングをしながら、知らず、知らずのうちに心と体が回復していたようです。そんな癒しの要素を持つレッスンリポート最終便をお届けします。

◎不得意レッスン
今日は、とても苦手なレッスンから開始です。どのレッスンかというと、壁にある矢印《→》《↑》を見て、トレーナーさんの指示通り矢印を読み上げたり、手を動かすもの。一見簡単そうなのですが、「矢印とは反対の方向に手や口を動かしましょう。メトロノームのリズムにあわせくださいね」とにっこり笑顔で、無理な?指示をされるので、やってみると、なかなか難しい。手足、口をばらばらに動かそうとすると、脳と体が別の生き物のように暴走し始めるのです。難しさとくやしさのあまり、私はついに奇声をあげ、みなさんの失笑を買いました。ちなみに、このレッスンは、バランスが鍛えられるそうで、自分に足りないものがよくわかりました。次は、リラックスして、せめて奇声を発しないようにしなくては。

◎目標設定シート活用法
次に目標設定シートを書く課題に取り組みました。目標を書くことが大切な理由は2つ。
1. 目標を書くと、視覚で確認し、脳にインプットされ目標達成の意識が強まること。
2. 目標シートを何度も見返えすことで、「この目標が叶うといいな。叶うとこんな楽しいことがあるな」と達成した喜びを想像するきっかけを常に持てること。
例えば、車を購入したいと目標を持った場合の具体的な活用法。車購入のためにはお金がいる↓貯金をしよう↓お金を節約しよう↓これが積み重なるとあの憧れの車が買えるぞ↓それはすごくうれしい↓すすんで節約しようじゃないか!↓3年後お金が貯まった↓念願の車購入。というサイクルがとてもいい状態。しかし、毎日忙しく過ごしていると、頭のはしでは、「この節約は車のため」とわかっていても、「まあ、今日ぐらいはいいか」と思ってしまいがち。そこで、日々目標シートを目で見て確認し、目標に向かっていることに、にっこり満足すると、自分が何のために節約しているのかを再確認でき、「もっと大きく楽しい喜びが待っている」と思える。この喜びの先取りサイクルを続けることが目標達成への近道だそうです。そして、この達成の過程を徹底的に楽しむのが最大のポイントとのこと。努力を苦労と思わず、楽しみに変える。そのための工夫の1つが目標設定シートなのだろうと思いました。目標シートを書いて、繰り返し見て、毎日わくわくしながらやるべきことにチャレンジするぞ!

◎感謝
さて、私の体験記は、ここで一区切りです。ここまで読んでいただきありがとうございました。これまで、イプラスジムで教わったことをベースにこれからも日々鍛錬して、なりたい自分になります。
最後に、レッスン時、たくさんの質問に答えてくださったトレーナーさん、どんくさい私を励まし、一緒にレッスンを受けていただいたみなさまに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございました。それでは、またお会いする日まで、ごきげんよう!

岸沢香織
会社員時代、社内報に書いたエッセイをほめられ、その気になって勢いでライターに。現在は、書評・インタビューなどを中心に活動中。