株式会社 脳力開発研究所|アルファ脳波を指標にしたメンタルトレーニング、脳力開発、ヒーリングなどの研究開発、指導を行っています。

意思決定におけるESPと確率論
On the decision making by ESP and probability theory
日本超心理学会 第37回年次大会発表論文より抜粋
徳島大学工学部講師
脳力開発研究所志賀一雅
要 旨
人は、目に見えない、耳に聞こえない情報に対し、ESPが働いて認知できるという考え方がある。そのメカニズムが解明されていないので、単なる偶然の一致だという主張もある。この相反する考え方は、予測や意思決定に重大な影響を与えるので、本稿で、実験事実を基にして、ESPが的確に働き、そのESPを磨くことができ、ESPの信頼性を向上させ、意思決定の重大な手がかりにすることができることを数学的に検証する。
Summery:
There is a way of extra sensory perception works for the information that one cannot look with eye. Because the mechanism is not elucidated, there is insistence to be agreement of simple accident. This different way of thinking gives serious influence to a prediction and decision making. I want to inspect it mathematically on the basis of experiment fact that perception can clean a work, reliability of perception improve and perception becomes a serious clue of decision making.
1. はじめに
本研究は、表題を意図して行われたものではなく、日本航空高等学校(山梨県)の学生にメンタルトレーニングを指導してきた過程で得られた結果が、あまりに驚異的なために、改めて表題を意図してまとめたものである。
 メンタルトレーニングは、いわば心の持ち方の練習であり、試験や試合など、日ごろの勉強や練習で培った実力を、遺憾なく発揮できるようにする目的で実践した。その成果は部活において発揮され、野球や柔道、水泳やバレー等で好成績をあげてきた。

しかし一般の学生に対する効果を明確にする必要から、ESPの働きや記憶力のテストを全校学生対象に行った。テストへの参加のモチベーションを高めるために、「右脳オリンピック」と称して、ESPカードの的中数や記憶力を競うイベントを行い、優勝者に賞品と賞金を授与することにした。

公教育の場でESPカードを用いることには若干の抵抗を感じたが、リアルタイムで結果が評価できる利便性を重視した。一般にはマジックの道具としてよく使われており、信憑性に欠けるため、超心理学の研究には使わないと聞くが、要は使い方の問題であり、充分に管理された状況で実施すれば問題はないと考えた。

幸い、隣接して航空大学校があり、そこではメンタルトレーニングを実施していないが、131人の大学生も賞金目当てに参加してくれたので、コントロール群にした。高校生の950人を含め、1000人を超す大がかりなテストを平成13年11月、14年12月、15年12月の3回にわたって行った。
2. トレーニング
具体的には、授業前のホームルームの時間を利用して、全教室に10分間のメンタルトレーニングテープを放送する。生徒はそれを聴きながら自主的にトレーニングをする。初期の頃はおおむね2割程度の学生が熱心に行っていたが、ほとんどは騒いだり居眠りをしていたりでトレーニングの形態をなさなかった。しかし2年経過した段階では、8割の学生がメンタルトレーニングを実践しているように思われる。
トレーニングの内容は、姿勢を整え、軽く目を閉じて深呼吸をする。心と体をリラックスさせて、いろいろイメージ(想像)する。何をイメージするかは、月ごとに変えて指示する。週1回のロングホームルームの時間を利用し、時間をかけたトレーニングの実践や、その目的、理論的裏づけ、効果などを説明し、毎朝のトレーニングに積極的に参加するよう促した。
熱心に練習している学生は、健康面が改善され、寝つきや目覚めなどの生活のリズムがよくなり、ESPや記憶力が向上し、毎朝のトレーニング自体も心地がよいことから、口コミで仲間たちに広がり、自主的にトレーニングする学生が、当初の2割程度から8割へと増えた。
3. テスト
ESPが的確に働くか否かを評価するためESPカードを用いた。超心理学の実験ではESPカードは使わないことにしていると聞くが、1000人もの被験者をリアルタイムで評価するには最適であり、危惧される不正に対して十分に管理すればいいと考えた。二人組になり、第1図に示すような5枚のカードを表向きに並べ、相手のシャッフルした5枚のカードを伏せて受け取り、○だと思ったカードを○のカードのところへ、□だと思ったカードを□のカードのところへ置く・・・・、という具合に順次5枚のカードを並べる。すべて並べ終えたら、伏せておいたカードを開き、何枚あたっているかを数える。これを5回繰り返し、全部で25枚のカードで合計何枚当たったかで評価した。

無作為に行った場合、1回目で1枚あたる確率は1/5、5枚全部あたる確率は1/120 になる。計算上では、5回繰り返した25枚の中で、

偶然に5枚当たる確率は 1/5
偶然に10枚当たる確率は 1/ 14,000
偶然に15枚当たる確率は 1/ 1,800,000
偶然に20枚当たる確率は 1/ 200,000,000
偶然に25枚当たる確率は 1/ 24,800,000,000

となり、1000人の中で偶然に10枚以上当てることのできる人はいないはずである。
4. シミュレーション
偶然の可能性を確かめるため、乱数発生プログラムをつくり、○□☆+△ の記号をランダムに配列した131組の5行5列のマトリックス A、B を用意して、無作為に A、B を組み合わせ、それぞれのエレメントの記号が一致したものを数えた。つまり、マトリックス A、B それぞれのエレメントが一致しているものを 1、不一致を 0 として、25個のエレメント (25枚のカード)でいくつ合致しているかを数える。
第2図の場合、5枚のカードが的中したことを表している。 131組のシミュレーションの結果を第3図に示す。図から明らかなように、偶然に当たるのは5枚が最高であり、9枚以上当たることはなかった。
第3図の対称性の悪さは試行回数が少ないからで、1000回試行すると対象性はよくなる。それでも9枚当たるケースが2回、10枚当たるケースは10000回試行して1回だけだった。
自然界で、きわめてまれに起きる偶然現象の確率はポアソン分布が考えられ、その確率密度関数は
(1) 
ただし、x = 0,1, … , λ > 0
これは 第4図のようになり、λ が大きくなると正規分布(Gaussian distribution)に近づく。正規分布の密度関数は、
(2) 
μ は、この分布の平均、σは、標準偏差。
ここで、変数tを用いて、次の変換を行う。
(3) 
両辺に対して微分を求めれば
(4) 
であるので これを、(2)式に当てはめれば、
(5) 
-∞ から+∞ まで積分すれば、その値は1となり、この関数式は第5図のような左右対称となる。
μ= 0、σ= 1のときが標準正規分布で、x が正規分布にしたがうとして規準化すると、z で変換された正規分布の確率密度関数は、次式となる。
(6) 
正規分布の確率密度関数によれば、第5図の右に示したグレー部分に相当するのは、z≧Aであるときの確率を意味しており、次の積分で与えられる。
(7) 

第2図の場合、5枚のカードが的中したことを表している。

131組のシミュレーションの結果を第3図に示す。図から明らかなように、偶然に当たるのは5枚が最高であり、9枚以上当たることはなかった。

第3図の対称性の悪さは試行回数が少ないからで、1000回試行すると対象性はよくなる。それでも9枚当たるケースが2回、10枚当たるケースは10000回試行して1回だけだった。

自然界で、きわめてまれに起きる偶然現象の確率はポアソン分布が考えられ、その確率密度関数は

5. 実際のテスト
ESPを働かせると、シミュレーションの結果とはかなり違う。つまり偶然の結果ではなく、そのメカニズムは不明ではあるが、何らかの作用力が働き、ESPカードの情報を認知し、意思決定しているように思われる。


右の写真のように2人ペアーとなり、自分の5枚のカードをシャッフルして相手に渡す。それをESPで判断して第1図に示すような形に並べる。5枚並べたら開き、当たった枚数を記録する。これを5回くり返して25枚のうち何枚当たったかで評価する。

各クラスから上位3名を選抜して決戦を行う。この予選の段階で25枚全部当てた学生が、平成13年の予選ではいなかったが、決戦で2人、平成14年には予選で16名、決戦で36名も現れてしまった。

予選では、各クラス担当の先生が1人で、監督の目が行き届かず、ごまかしを排除できないが、決戦では教員8名が監督をしてくれたので、ごまかしの余地はない。


「右脳オリンピック」では記憶力テストも行い、普通の人の5倍も記憶できたという驚異的な結果を得ているが、ここでは省略する。
6. 実際のテスト
結果の一部を第6図に示す。図には大学校生の131人を太い実線で、高校2年生276人の結果を細い実線で示した。決戦に出場した学生は決戦の成績を、その他は予選成績でプロットした。

シミュレーションによる偶然の的中領域を灰色で示した。明らかに大学校生の結果は偶然より当たる方へシフトしており、26名(19.8%)の学生は、偶然では起きなかった10枚以上を当てている。本人たちは、どうせ偶然だから、運がよければ賞金を手にできると思って参加したが、ESPの働きで「当てたい」と思うと当たる方向への力が働き出すものと思われる。

このことはメンタルトレーニングを実践した高校生が顕著で、13枚以上が偶然に当たる確率は、(7)式によると約100万分の1で、こうなると「ESP」よりも「透視」と言いたく、248億分の1の25枚を全部当てた学生が存在することに注目したい。
第7図に、高校2年生の変化をプロットした。1年経過すると、メンタルトレーニングを日課としている生徒は的中率が飛躍的に増し、あまり熱心でない生徒の改善は見られなかった。

的中数が13以上の学生と、10以下の学生とでは意識調査で顕著な違いがある。前者は明るく肯定的で建設的、チャレンジ精神が旺盛。期待感や達成感、満足感が強い。後者は暗く否定的で無気力。不満が多く批判的、保守的傾向にある。
7. 考察
本実験では、記憶力テストや脳波測定も行った。しかし、表題からそれるので省略するが、ESPカードの的中成績のいい学生は、記憶力もいいし、脳波的所見もよく、きわめて相関の高いことが分かった。もともと人間には五感で情報を認知する機能の他に、それらを補完する第六感の存在が考えられていたが、検証する手段がなく、客観性にも乏しいため科学的な研究になじまない。トリックやごまかしの介在する可能性が大きいために信憑性がなく、ほとんど研究されていない。

しかし、社会現象は必ずしも演繹的には展開されず、予測に反することが多発する。この不景気の中で、経常利益が10%を超す会社が11,400社もあり、そのほとんどが経営者のESPで判断しているという。これは、多くのデータを解析した確率論的意志決定より、経営者のESPによる判断の方が、常識を越えた好成績を得ていることを示している。統計に基づく確率論的意志決定は、間違いを犯さないが、第6図、7図が示すように低値で安定してしまう。

人の脳は、磨けば磨くほどESPが的確に働き、信頼性が向上するので、多くの人がメンタルトレーニングで脳の機能を高め、問題の解決や目標の達成を図ってもらいたい。